今回は、映画『国宝』を観て深く心を動かされたので、ネタバレありでじっくりと感想とあらすじを語っていきたいと思います。
吉沢亮さん・横浜流星さんのダブル主演、そして李相日監督が描く“芸の極致”。観終わった今、「これは確かに国宝級だ」と実感しています。
📝 映画『国宝』とは?
原作:吉田修一『国宝』(直木賞受賞作)
監督:李相日(『悪人』『怒り』)
主演:吉沢亮(橘喜久雄)、横浜流星(花井俊介)
📖 あらすじ(ネタバレあり)
物語の主人公・橘喜久雄(吉沢亮)は、ヤクザの父を持つ少年。
父が抗争で命を落とし、身寄りを失くすが、才能を見出され、歌舞伎界の名門・花井家に引き取られる。
迎えた先にいたのは、名門の血を継ぐ少年・花井俊介(横浜流星)。
ふたりは互いに複雑な感情を抱えながら、同じ舞台に立つ俳優として成長していく。
10代で初舞台を踏んだ喜久雄は、持ち前の集中力と美しさで瞬く間に注目を集める。
一方で俊介は、血筋に縛られながらも、喜久雄に対する劣等感や嫉妬を内に秘めている。
やがて大人になり、二人は『曽根崎心中』の主役で共演。
喜久雄が代役として主演を務めることになったことで、俊介は自尊心を傷つけられる。
舞台は絶賛されたが、2人の間には亀裂が生まれ始める。
年月が経ち、俊介は糖尿病で右足を切断するほどの大きな障害を負ってしまう。
舞台から遠ざかり、鬱屈とした日々を送っていた彼に、再び『曽根崎心中』への出演依頼が舞い込む。
そして、かつての相手・喜久雄とともに舞台に立つことに。
本番の舞台、俊介は不自由な足で必死に演じ、喜久雄も全身全霊で応える。
かつての確執を越えた魂の芝居に、観客も涙する。
最終章では、喜久雄が人間国宝に認定される一方で、私生活では娘との確執や孤独を抱えていることが描かれる。
それでも最後、彼女が劇場でそっと拍手を送る場面は、芸の道に生きた父への最大の敬意だった――
🎭 感想(ネタバレ含む)
🎤 演技について
吉沢亮さんは、喜久雄という“静かな狂気”を見事に体現していました。
とくに少年期から老年期までを一人で演じ切ったのが本当にすごい。
所作の正確さだけでなく、視線の動き、間の取り方、呼吸まで「役に溶け込んでいる」印象。
横浜流星さん演じる俊介は、繊細で脆くて、でも熱くて。
事故で足を引きずる後半の演技は、まさに鬼気迫るものがありました。
舞台での2人の対峙シーンは、鳥肌と涙が止まりませんでした。
🧠 テーマと余韻
この映画の根底に流れるのは、**「芸にすべてを捧げる人生は幸福か?」**という問い。
喜久雄は芸のために家族を犠牲にし、俊介は芸に裏切られ、それでも最後は舞台に戻る。
2人の人生は交錯しながらも決して交わらず、それでも舞台の上でだけは“つながる”。
そんな儚くも美しい関係性に、胸が締めつけられました。
🎞 まとめ:タイトルに偽りなしの「国宝級」映画
3時間という長尺をまったく感じさせない、濃密な時間でした。
芸の美しさと、その裏にある人間の業や孤独――
そのすべてを体感させてくれる、静かに心を打つ名作です。
伝統文化や芸術に興味がない人でも、人間ドラマとして深く楽しめるはず。
映画館でこそ観るべき1本、心からおすすめします。